近づきては 春遠ざかる 梅一輪
一月の末に春になったかのように暖かい日が訪れた。
南風が吹き、四月並みの気温となり、白梅も一輪だけ花をつけた。
しかしこの暖かさは一日で終わり、次の日は風が吹きあれ、
梅の開花は一輪から増えそうもなかった。
株式会社ハンモック会長による、写真俳句ブログです。
近づきては 春遠ざかる 梅一輪
一月の末に春になったかのように暖かい日が訪れた。
南風が吹き、四月並みの気温となり、白梅も一輪だけ花をつけた。
しかしこの暖かさは一日で終わり、次の日は風が吹きあれ、
梅の開花は一輪から増えそうもなかった。
引越車 春待つ道を 突っ走る
1月も終わりになると引越が増えてくる。
新入学の学生やサラリーマンの転勤による引越が多くなる。
今日も引越しの車が夕暮れの高速道路を急いでいる。
この引越しが済めば、暖かい春がやってくるのだろうか。
緑なる イタリア国旗の 暖かさ
家の近くの気取らないピザ屋には、イタリア国旗が物干し竿に掲げられている。
イタリア国旗は同じ三色旗でもフランス国旗と違って暖かい感じがする。
緑と青の色の違いで、まるで国民性を示すように温度差を感じる。
確かに、イタリア国旗は洗練されたり、お洒落だったりしないぶん、
陽気な暖かさがある。
電飾や 際立つ闇と なりにけり
夜六時過ぎに郊外を車で走っていた。
あたりはもう真暗で、街灯や信号機の灯だけが道路を照らしていた。
角を曲がると突然、一本の木がイルミネーションで飾られて、光輝いていた。
こんな郊外の寂しい場所で、いったい誰が作ったのだろうか。
一瞬のうちにイルミネーションを通りすぎると、
今までに増して深い暗闇が続いていた。
冬の塔 光も凍る 孤独かな
風が冷たく、寒い夜だった。
車の窓から外を眺めると、冷たい風になにもかも凍えてしまいそうな夜だった。
ゆきかう車の光も、ライトアップされた東京タワーの暖かい色さえも凍って、
孤独に耐えているように見えた。
澄みきった 青は
こんなにも澄みわたった冷たい青空は久しぶりだ。
どこまでも青く、吸い込まれてしまいそうだ。
この涯しなく続いてゆく冬空に、悠久の想いを馳せてみよう。
白雪や 海にも空にも 従がわず
相模湾の端の漁港に行く機会があった。
すばらしく晴れた一日で、海の上に富士山がくっきり浮んでいた。
白雪を冠した富士山は相模湾を眼下に、海の青、空の青にも惑わされず、
堂々とそびえ立っていた。
凝視する 瞳の奥の 疑念かな
白い猫が裏木戸の外から家の中をじっと見つめていた。
猫は猜疑心が強い。なかなか人に慣れない。
しなやかでしたたかな生き物だ。
いつでも逃げられるように、疑い深く見守っている。
どこか、心がしんとしずまって打ちとけない気がする。
誘われて 庭に
寒椿が咲いた。
花弁の大きな真赤な花が、葉に隠れるように咲いている。
いさぎよい花で、散るときは花ごと落ちてしまう。
隠しきれない慕情が匂ってくるような風情がある。
蝋梅や 凍える朝も 風匂う
この季節になると蝋梅が香る。
冬の風に甘くせつない匂いをのせて、蝋のような花を咲かせる。
蝋梅の匂いをかぐと、いよいよ新しい年が始まるという気持になる。
ピーンと張りつめた冬の凍てついた空気の中、
なつかしくものがなしい気分を楽しんでいる。