どんな日も

決めかねて佇むほとりあやめ池

決められず悩むことも多い日々が続き、アヤメで名高い

細川庭園にやってきた。池のほとりのアヤメを見ながら、

なんとか気持ちの整理をつけようとしていた。

恥じらい程遠く芍薬の花

大倫の芍薬が花開いた。香りはそれほどでもないが、花の大きさ

華やかさは並ではない。零れ落ちんばかりの重量感と重層感はおどろくばかり。

花言葉である「慎み」や「恥じらい」とは縁がないような佇まいである。

風誘うまどろみの午後春が行く

五月の中旬まで気持ちの良い春が続いた。窓を開ければ

爽やかな風が窓越しにカーテンを揺らし、まどろみを誘った。

しかし、この素晴らしい季節はそうそう長続きせず、はや梅雨の

到来となってしまったようだ。

千年の銀杏春の羽広げたり

近くに樹齢何百年という大銀杏がある。冬には全ての葉を落とし

幹と枝だけの裸木になってしまうが、春の訪れとともに若葉が

大きな羽を広げて雄大な銀杏として復活する。

建物の陰からそっと春の猫

春は生き物にとっても春。春らしい気分になった猫たちは

建物の陰から蔭へ何かを探し求めて歩き回る。

見上げれば欅の若葉香り立つ

春本番。欅の大木はみるみる若葉を茂らせた。欅のトンネルを

見上げれば網目のように入り組んだ青葉若葉から緑が香り立って

いるようだ。

薔薇の美容室五月の風薫る

散歩の途中で薔薇に囲まれた美容室を見かけた。薔薇の花が

目に入る前にその強い香りが鼻を衝いた。この美容室の主人は

よほど薔薇が好きらしい。思わず写真を撮ってしまった。

連休に思い入れなし春満月

緊急事態宣言下の連休は遊びの予定も立てられず、読書や散歩

趣味の囲碁などで時間をつぶすしかない一週間であった。それでも

夜には春の大きな満月が静かな東京を煌々と照らしていた。

花終わり白き躑躅が見え隠れ

桜が散った後は全ての植物が息を吹き返す。木々は青々と、

躑躅や海棠も綺麗に着飾り、白やピンクが街を彩る。

大きな道路の中央分離帯の躑躅さえも自己主張をし始める。