名刺からはじまる営業現場のイノベーション ~1ツールで生産性を拡大したある会社の物語~
- INDEX
-
最終話『ホットプロファイルで最大の成果を出したA社の結末』
FAシステム導入初期から制御機器開発に取り組んできたA社は、ハイレベルな技術者集団としての評価を業界に確立する。自然にマーケティング活動の主軸は自社製品の技術優位性の訴求に置かれ、マーケティング部のメンバーはコア技術の特性を熟知する製品開発部出身者で固められるようになった。
一般に営業部門とマーケティング部門の連携が強固な販売推進力を生むとされているが、もともとプロダクトアウトの発想に立つマーケティング部と、顧客のニーズを聞き取り適切な製品を推奨販売する営業部では方向性が真逆で、マーケティング部長が指摘するように両部署の業務は完全に遮断されていた。
Webサイトに顧客関係強化の
仕組みを取り入れる
木築をはじめとする営業部のマネージャー達はハンモック社営業担当・発田とともに、マーケティング部との統一運用ルール策定の場に臨む。案の上、突然の新規ツール活用命令にマーケティング部の反応はすこぶる悪い。Web開発チームマネージャーの中山に至っては、今にも火を吹きそうな勢いだ。
「あのさぁ、ホットプロファイルって営業支援ツールだろう。なんでそんなものが、マーケティング部に必要になるわけ?」
「営業部では今後、主力製品に焦点を当てた統一販売キャンペーンを展開しようと考えています。これを成功させるためにも、顧客の反応をリアルタイムに確かめる仕組みをコーポレートサイトに持たせたいわけでして、ここはぜひ我々の顧客データベースをご活用いただければと...」
木築のへりくだった説明も、火に油を注ぐだけだ。
「デマンドジェネレーション(見込み客の獲得、育成、絞り込み)の仕組みを、Webサイトに持たせたいんだろ。でも、なんでその必要があるわけ?当社の技術力をコーポレートサイトで堂々とアピールすれば、顧客なんていくらでも飛びついてくるだろう。それを売り捌いていくのが君達営業部の仕事で、こちらにWebサイトの機能追加を要求してくるのは、まったくの筋違いじゃないか?」
実は、ホットプロファイルの<見込み客発掘オプション>には、Webフォームやページを短時間に作成し、顧客データベースに紐づけてデマンドジェネレーションを行う機能が備わっている。発田がそのことをいくら説明しても、マーケティング部のマネージャー達はまったく聞く耳を持たない。
「ああ、もういい!だから、"A社製品は、技術は良くても市場を見ていない"って言われるんだよ!」
短気な営業部第2チームマネージャー・南田が、これ以上続けても意味のない打合せを打ち切った。
ホットリードの発掘が的確な商談・施策に結びつく
それでも、木築と発田はあきらめなかった。マーケティング部を頻繁に訪れては、プロダクトアウト発想の製品開発部出身者でも納得できそうな言葉を選び、粘り強い説得を続けていった。
「こう考えましょう。営業部では、すでに既存顧客の膨大なビッグデータを蓄積しています。これを分析すれば、さらに市場優位なA社製品のバージョンアップ、そしてブランディング強化にもつなげていくことができますよね」
営業部だけに、木築の弁舌が冴えわたる。
ホットプロファイルの<見込み客発掘オプション>は、A社の顧客データベースとハンモック社が管理する企業データベースを紐づけて、大量の顧客リストから企業属性や部門、役職などに従って分類する作業を自動化する。これをWebトラッキング機能と連動させれば、顧客属性を絞り込んだ<ターゲティングメール>配信も可能になる。
「つまり、重点的に技術力を伝えたい顧客層に向けてのリスト抽出も簡単に行えるわけです。もちろん、リスト要件にWebページの閲覧内容や頻度などの条件設定を加えていくことも可能ですから、資料請求やセミナー開催など、製品ごとに効果のあるプロモーション展開をご判断いただくツールとしてもご活用いただけるわけですね」
「つまりさぁ、営業部にとっては製品に興味を持つホットリード(優良見込み客)の発見につながるって、発田さんは言いたいんだろう。まぁ、いいや。とりあえず、コーポレートサイトへの機能追加とターゲティングメールあたりから、ホットプロファイルを試してみるよ。ただし、あくまでマーケティング部は、公開技術セミナーへの誘導と集客を図る装置として使ってみるだけだからな」
顧客ニーズに即応するアカウント
セールスの実現
ホットプロファイルにA社のコーポレートサイトと連動してニーズのある顧客を自動発掘する機能が加わることで、営業部はより成約確度の高い顧客にアプローチしていく仕組みを手に入れた。この時から、麻川営業部長が狙った"攻めのアプローチ"から"攻めのクロージング"までをシームレスに連携する営業フローが、本格的に稼働し始める。
ホットプロファイルの<アカウントセールスオプション>は、ハンモック社が管理する企業データベースからA社のWebサイトにアクセスした未知の企業のIPアドレスを特定する。これをA社が保有する顧客データ(名刺情報、営業活動情報、メール開封履歴、Webアクセス履歴 等)と紐づけることにより、「どの部署の誰が」「いつ」「どのページ」へアクセスしたかのレベルまで、詳細な顧客分析が可能になる。
この機能と1画面に顧客情報を集約する<お客さまカルテ>を連動させれば、ニーズの高い顧客を敏感に察知し、自社の人脈を活かして着実に商談成約へと結びつける仕組みが成立する。
「木築マネージャー、定期メルマガで紹介した製品αのアクセス数が最近異常に増加しているのですが」
北野がそう報告すると、西村が即座に反応する。
「僕も気になったので、ホットプロファイルの<Webアクセス企業>一覧で調べてみたら、どうやらZ社工場長の前島さんですね。ここ連日、価格ページへのアクセスが集中しています」
「<お客さまカルテ>で、確認します!<組織ツリー>では、Z社の前島さんの社内名刺所有者は、1名。それは...東君じゃないの!」
白田が背中を叩くと、東がスマートフォン片手に颯爽と飛び出していく。
息の合った連携プレイとともに、A社営業部は見込み客の獲得から育成・発掘、商談成約までのプロセスを一貫する"攻めの営業支援ツール"を完全に使いこなしていた。
全社を一貫する顧客情報管理基盤の構築
やがてA社では、営業部とマーケティング部の合同ミーティングが頻繁に開かれるようになった。ホットプロファイルから読み取れる市場動向を分析し、各製品のプロダクトライフ・サイクルごとに有効な販売戦略を組み立てるためだ。今まで両部門の連携が分断されていたA社にとって、それは驚くべき進化だった。
「...以上が新製品Σのランディングぺージにおける顧客属性分析です。これに基づき、想定されるホットリード企業のリストを抽出し、ホットプロファイルの<タスク管理>画面に反映させておきました。案件化への進捗状況を確認しながら、セミナー誘導やオウンドメディアなどの施策でマーケティング部はフォローしていきます。営業部の皆さんも、商談成約に向けて、頑張ってください」
深々と頭を下げで着席する中山に、隣席の南田がからかうように話しかける。
「中山さん、最初のミーティングから随分キャラが変わっているよね。どういう心境の変化よ」
「うるさいな。顧客の反応がリアルタイムに伝わり、売れていく製品が手に取るようにわかる。ものづくりの会社でマーケティングに関わる者として、こんな面白いことはないのだよ!」
名刺管理×SFA×マーケティングで
営業生産性を拡大する
後日。麻川営業部長は、社長室に呼ばれた。入室すると、社長は株式新聞を片手に難しい顔をしている。
「麻川君、よくわからんのだ。確かに収益率は20%向上したが、株価までが連日上昇している。これも、ホットプロファイル効果なのかね」
「あはは、さすがにそこまでの効果はありませんよ。ただ、統一された顧客管理基盤を持つことで、企業価値すなわち組織力と付加価値創出力が向上したことは確かのようです」
同じ頃、木築は全社導入支援に訪れた発田をミーティングルームに迎え入れていた。
「おかげさまで、1つのツールで顧客情報を共有して確実に商談成約へと結びつける仕組みが完成しました。ありがとう、発田さん!」
「いえいえ、皆さまがホットプロファイルの機能をよく引き出してくれたからで、こちらからお礼を言いたいくらいですよ。ところで、私もようやくマネージャーに昇格しまして、新しい名刺はご入り用ですか?」
「もちろん!我が社の売上拡大に結びつく貴重なリアルタイム・データですから!」
ミーティングルームに、2人の笑い声がいつまでも響いていた。
-Next is your turn-