名刺からはじまる営業現場のイノベーション ~1ツールで生産性を拡大したある会社の物語~
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第4話『営業活動の可視化でさらなる展開が・・・』
名刺から得られる顧客情報を統合し、商談成約への最短距離を探るホットプロファイル。その導入効果を実績で証明することを麻川営業部長から求められた第1チームマネージャー・木築は、社内に眠る名刺を掘り起こし、第2チームの人脈を活かして大きな商談を成約させた。
木築は、その経緯を定例の営業マネージャー会議で克明に報告し、その直後に営業部全体での活用を麻川部長に再提案した。ホットプロファイルの効果を高めるためには、リソースとなる名刺情報のボリュームを増やすことが最短距離になることを実感した上での、確信的な行動だった。
顧客データベースの機能を
最大化させる
当然、会議の場は荒れ模様となっている。
「約束が違うぞ、木築。私は、"その後の拡張は第1チームの実績を見て検討する"と言ったはずだな」
木築の代わりに第2チームマネージャーの南田が、事前に示し合わせていたかのように抗議の声を上げる。
「それって、おかしいですよ。部長は、第1チームの商談成約だけを肩入れする気ですか」
「ならば、全チームとも名刺管理ツールを使いこなし、売上20%アップを達成することを確約できるのか。それができるのならば、営業部全面適用も異存はないぞ」
もとより売上20%アップは業務命令だし、木築からホットプロファイルでの成功体験をさんざん聞かされた直後だけに、どのチームのマネージャーも快活にうなづく。南田に至っては、ガッツポーズを決めている。
「ならば、全面導入!以上!」と麻川部長が席を立とうとした時、木築はすかさず二の矢を放った。
「部長、もう1つ拡張提案があります。この際、名刺管理の<基本パック>から<SFAパック>に移行するべきです」
「何だと! 君達は、1人あたり1万円もかかっていたSFAを放棄した営業部だぞ。よく言えるな」
「お言葉ですが、ホットプロファイルはその半額以下です。それに、成果と進捗を可視化するSFA機能がなくて、どうやって導入効果をお見せできるのでしょうか」
顧客データの共有が柔軟な
営業ワークを支える
こうして、営業部全体でのホットプロファイル活用が本格的に開始された。<SFAパック>への移行にあたってもハンモック社営業担当・発田からの手厚いサポートが手助けになり、既存のワークフローとの調整もスムーズに進んだ。
<SFAパック>は、用途に合わせて条件を設定するだけで目的に沿った顧客リストを簡単に作成する<ターゲットリスト>機能を提供する。ホットプロファイルの顧客データベースを閲覧する際に、業種や規模などの企業属性や「過去に失注」などの条件を設定するだけで、営業アプローチをかけたい顧客先の一覧表を抽出し、その商談進捗状況までも可視化する。
情報・制御機器を顧客事業別に販売するA社営業部では、新製品発売時にチーム横断的な販売キャンペーンを展開する。その際には、<ターゲットリスト>がキャンペーン戦略策定のシミュレーションボードとして活躍する。そのマネージャー・ミーティングで、ふと南田がつぶやいた。
「こうやってリスト化して担当チームを振り分けていくと、重複する訪問先って意外に多いよな。これって、日頃から互いに連絡を密にして訪問先を分担していくようにすれば、もっと効率的に営業できるんじゃないかな」
A社がSFAの再導入に踏み切って得た最大の成果は、シンプルな操作性が顧客データの照合と共有を促し、全チームが連携する機動的な営業活動が展開できるようになったことだ。各チームのメンバーたちも、アップセルやクロスセルにつながる積極的な提案を行うようになってきた。
顧客の反応を確認する仕組みを
つくる
第1チームの定例ミーティング。まだ研修中の北野が発言を求める。
「マネージャー、ホットプロファイルには折角<One to Oneメール>という優れた機能があるのだから、重点製品をお客様に紹介するメールマガジンを発行するのはどうでしょうか。どのチームも同じ製品を取り扱っているわけですから、これは営業部全体の取り組みとすることを提案します」
ホットプロファイルには、メールで紹介したURLのクリック状況を伝えるWebトラッキング機能がある。メールの開封と同様に、顧客が興味を示したWebサイトを確認できれば、その後のフォローの道筋となる。
「ついでに、ホットプロファイルが製品のランディングページとリンクすれば、もっといいかもです。お客様の閲覧が集中するのはスペックなのか価格なのか、ここを把握できれば、より的確なアプローチにつながります」
「おいおい、それは本来、Webサイト自体が持つべき機能だろ。さすがにそれは、SFAの管轄外だぜ。それにな...」
東の発言が消極的な方向に流れかけるのを、木築は確信的な言葉で打ち消し、北野を励ました。
「いや、ホットプロファイルは顧客情報を一元化するシステムだから、マーケティング部とうまく連携できれば、それも充分に可能だよ。それにしても、北野は今後につながる良い提案をしてくれたな
営業活動の可視化が迅速な意思判断を支える
こうした営業部の活発な活動状況は、麻川営業部長の元にリアルタイムに伝わってくる。ホットプロファイルは、商談の進捗状況やKPI(重要業績評価指標)の推移を、カスタマイズされたレポートにしてダッシュボード上に可視化する。これまで使っていたExcelをテンプレートにグラフで表示することもできるので、各チームに確約させた売上20%アップ目標が順調に達成されていく様子が手に取るようにわかる。
商談や案件の管理においても、各チームが担当する顧客に合わせて製品や会社名などの管理項目を設定できるので、ポイントを押さえた報告データが挙げられてくる。おかげで、各チームに向けて的確な指示とアドバイスを出せるようになった。
何事にも経済合理性を追求する麻川は、以前に導入したSFAの期別受注予算実績対比表と今のものを見比べながら、ホットプロファイルの何がこれだけの成果を生み出しているのかを分析する。
-なるほど、受注見込客を着実に案件化しているわけか。前のSFAとの違いは...顧客データベースを営業部内で共有したことか。製品技術力に定評のあるA社は、各分野に幅広い顧客を持つ。各チームが人脈を共有すれば、競合他社より先にアポイントを取り、商談成約へと結びつけることができるわけだ。
麻川の結論と納得は、思わず声になって表れた。
「各チームの名刺情報をリソースに、見事に"攻めのクロージング"を成立させている。木築は、本当に素晴らしいSFAを提案してくれたものだ」
この時、「待てよ」と、麻川は思った。
-"攻めのクロージング"ができるなら、ホットプロファイルは"攻めのアプローチ"もできるはずだ。
麻川はもう一度、発田が初回面談の際に提示した資料を念入りに読み返す。やがて、何かを決意したかのようにつぶやく。
「彼等の尽力に応え、社内のリソースを活かしきるためにも、今度は私が大きな壁を乗り越える必要があるようだな」
機能拡張時にツールの経済合理性が実証される
ホットプロファイルの目標達成状況グラフが、会議室のワイドモニター上に映し出されている。それを感心して眺める執行役員達の前で、麻川営業部長は一段と大きな声を張り上げた。
「ご覧のように目覚ましい成果を実証したホットプロファイルの活用を、マーケティング部に強く要望するものであります」
「冗談じゃないよ、麻川さん!あんた、営業支援ツールの適用を他の部署にまで拡げる気ですか!」
余計なコストを増やすだけの提案に、経理部長は大いにご不満のようだ。
自分の頭を飛び越えてツール導入を提案された形になるマーケティング部長も、さすがに苦笑している。
「まず費用面からご説明すれば、名刺管理・営業支援・マーケティングオートメーションそれぞれ個別にツールを導入した場合と比較して、約40%のコスト削減になることが報告されています」
モニターには、発田の協力を得て作成した資料が映し出されている。
「次に、効果面。強調すべきは、そのツールが同一のシステムであり、統一した使い勝手を持つことです。これは、部署を超えて共通の顧客データをハンドリングできることを意味します。つまり、我が社は、圧倒的なコストパフォーマンスで、業務を一貫する顧客管理基盤を構築できることになります。このことが当社の収益力強化に働きかけるメリットを、推して知るべきです」
ホットプロファイル効果を認めた麻川は、発田に勝るとも劣らない名プレゼンテーターだった。
「まあ何にしても、経営目標の収益率20%成長を実現できるなら、大いに結構じゃないか」
社長はもう手放しで大喜びだが、この時ばかりとマーケティング部長が釘を刺す。
「私としても新しくツールを導入していただけるのは歓迎ですがね、果たしてうちの部署に定着しますかね。現状の業務では必要としないし、なにしろ我が部と営業部の連携は、ご存知のように最悪ですよ」