【有識者インタビュー】『ITツール』コンサルタント 角川 淳氏に聞く<前編>

INDEX

    「ITやWebによって大きく変わるビジネス現場」今、求められるBtoB営業の企画提案力

    ITやWebによって、ビジネスの現場が大きく変わり続けています。 そのなかで、人のマインドや努力だけで、営業の成果を出そうとしても無理があります。そうかといって、これまで手作業で行ってきたことを単純にIT化しただけでも役立ちません。BtoBの営業活動で成果を出すためにはどう取り組み、どうITツールを使っていけばいいのか......。

    SFA導入の黎明期に「営業革新システムの実際」を著し、長年、BtoBの営業活動におけるITツールの使い方をコンサルしている角川氏に伺いました。

    トライツコンサルティング株式会社  
    代表取締役 角川 淳氏 氏

    高校時代からプログラムが好きで、大学は工芸学部電子工学科へ。卒業後システムエンジニアになるも将来に陰りを感じて、コンピュータの使い方を指導する側になろうと、コンサルティング会社に転職。2012年トライツコンサルティング株式会社を設立。25年以上、BtoBマーケティング&セールス分野のコンサルティングに携わっています。

    BtoB営業は2極化。ITツールでの自動化vs人間による細やかな
    企画提案

    いまBtoB営業分野で注目すべきことは?

    Webによって、営業プロセスが変わっていることに注目すべきです。

    個人の買い物で言えば、以前なら店に行って詳しい店員に質問したところを、いまはWebで検索して、買った人のレビューを参考にして、買う商品を絞り込み、価格の情報も得てしまいます。同じことが、BtoBの世界でも起きています。

    かつてなら、購買の際に、企業は出入り業者を呼んで相談したり、展示会などのイベントで見て回ったり、電話帳で業者を調べたり......まずは相談相手を探します。BtoBの営業は、顧客が求める情報を提供するところから始まりました。

    しかし、いまはまずネットで検索します。現在では営業担当者が顧客と接するときには、顧客は既に必要な情報をWebで収集して、かなり詳しくなっていて、商品をある程度絞り込んでいます。

    「うちの業界はまだ......」と思ったとしても、やがて顧客の担当者が世代交代すれば、そうなっていくでしょう。 営業プロセスの変化により、BtoBの営業のやりかたを変えなければいけない時代になりました。

    BtoBの営業の今後は?

    これからのBtoB営業は、従来のFace to Face、人間が面と向かって人間に対して行う営業に加えて、Webを使った営業、両方を考えて行く必要があります。その際に、軸がぶれないようにするためには、営業活動の目的をしっかりと意識しなければなりません。

    BtoB営業活動の目的は「顧客の購買プロセスの進捗を促し、自社商品・サービスの購買へ導くこと」です。

    Webでは「検索する人が欲しがっている情報を提供し、自社商品・サービスの購買に導く」ことを目的として、Face to Faceでは「Face to Faceでしかできない付加価値を提供し、自社商品・サービスの購買へ導く」ことを目的とします。

    お願いする立場から、
    顧客に求められるパートナーへ

    Face to Faceの営業で必要なことは?

    現在の顧客は「Webサイトで知りたいことが全部わかるようにしてほしい」「問い合わせたらすぐに回答が返ってきてほしい」「自社に役立ちそうな情報はメールで送ってほしい」と思っています。そして「問い合わせしてもしつこい電話営業をしないでほしい」と売り込み拒絶の気持ちが強まっています。

    Face to Faceの営業では、単純な情報提供、単なる自社商品の紹介はもう求められていません。「自社が考えていることがまちがっていないか、専門家からのアドバイスがほしい」「自社に合った具体的な提案をしてほしい」「社内の合意形成を支援してほしい」など、高度なレベルだけが求められています。

    しかも顧客が自らWebで情報を取りに行く時代のため、顧客がどういう状況にあるのか、以前よりもわかりづらくなっています。ITツールを駆使して、顧客についての情報をあらかじめできるだけ得たうえで、成約率が高いと見込まれるターゲットに、ハイクオリティな営業活動を行うべきです。提案をさせていただくという、お願いする立場では、受注率はなかなか上がりません。顧客から「提案してください」と期待される者になる必要があります。

    顧客との関係性を変える提案とは?

    単純に自社の商品やサービスを紹介するだけだと、商品の売り手と買い手の関係になってしまいます。しかし、たとえば素材や部品メーカーが、それらから作られる完成品のマーケットの将来展望を話し、そのマーケットに対して自社が行っている取り組みを語り、一緒に何かやらないかと提案すれば、パートナーの関係になれます。

    大事なことは、特定の素材や部品のことに限定せず、さまざまな可能性を持つマーケットや、自社の研究体制など、広く、付加価値のある情報を語ることです。相手が「だったら、こんなこともできないか?」と一緒に未来を想像し始められるようにオープンに話します。

    商品を買ってもらうのではなく、顧客のビジネスを提案して一緒に取り組むことを誘うことで、関係性が変わります。

    顧客の購買プロセスの進捗を促す提案方法
    とは?

    社内の合意形成を支援する提案です。顧客の購買プロセスの進捗を促すことに役立ちますが、たとえば早く商談を進めようと顧客の社内でのコンセンサスがとれていないうちに、デモの日程を決めるなど、自社が進めたいほうへと突っ走ってはいけません。あくまで顧客の購買プロセスに寄り添うことが大事です。

    営業プロセスは変わっていますが、購買プロセスそのものが変わってはいません。

    ① なりたい姿(ビジョン)の明確化
    ② 課題発見
    ③ 解決策の探索
    ④ 比較・選定
    ⑤ 意思決定
    ⑥ 購買

    必ずしも①から⑥へ順番に進むわけではなく、行ったり来たりもありますし、途中から始まり、最初に戻ることもあります。順番はどうあれ、顧客が、各ステップをきちんと押さえられていないと、社内で企画書を出したものの、意志決定者に企画を否定されてしまいます。たとえば「なりたい姿(ビジョン)の明確化」ができていないと、ITツールを導入する際に、その導入によって実現することが会社にとっては不要とされて、「オーバースペックだ」などと決裁者に否認されることがあります。

    営業担当者がすべきことは、顧客が話すことで自分の頭が整理できるように、もやもやしていた問題を解決ができるように、サポートすることです。そのためには情報の整理のテクニックや、課題解決の仕方などの技術、企画書の書き方などのノウハウを持つ必要があります。

    WebによりBtoBの営業プロセスは変わっています。これからのBtoBの営業は、WebなどITツールを駆使しての営業企画と、Face to Faceでの、人間でなければできない提案、顧客支援という二極化の時代です。

    今回はFace to Faceでの今後の営業活動について紹介しました。 次回はWebなどのITツールを駆使した営業活動のポイントをご紹介します。

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