マーケティングオートメーションの歴史~BtoB企業の営業を革新~
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BtoB企業の営業を革新する
マーケティングオートメーションの歴史
マーケティングオートメーションは、マーケティング活動の各プロセスの自動化を支援するためのツールです。
そのマーケティングオートメーションは2000年ころに生み出され、CRMやSFAと同様にアメリカで発展しました。日本に導入されるようになったのは、2010年代半ばになってからのことであり、導入時期の遅さから「日本の最大の弱点はマーケティング力」「日本のBtoB向けマーケティングオートメーションは一周遅れ」と表現する専門家もいます。
しかしながら、リーマンショック以降、日本のBtoB企業では売上が激減して、既存顧客だけでは売上が確保できず、新規開拓をより重要視する企業が増加。マーケティングの重要性が認識され、BtoB向けのマーケティングオートメーションにも注目が集まるようになってきたのです。ここでは、マーケティングオートメーションの発祥や発展、日本での現在の状況をご紹介します。
アメリカで発展したBtoB向けのマーケティングオートメーション
BtoB向けマーケティングオートメーションは、2000年ころにベンチャー企業によって開発された製品が原型となっています。これが好評を得たために、追随する製品が現れ、アメリカでの市場が短期間に形成されました。
その位置付けはSFAの補完にあります。SFAは営業部隊をオートメーション化(自動化、実際には管理・支援)する機能を持ち、アメリカで1990年代に誕生しました。
しかし、SFAは、営業の前段階となるマーケティングに関する機能をほとんどもっていませんでした。そのため、マーケティングオートメーションが登場する以前、アメリカのマーケティング担当者は、既存システムを組み合わせ、自前のプラットフォームをつくっていました。
顧客データベース、メール配信システム、コンテンツマネジメントシステム、ログ解析システム、データ分析システムなど、それぞれのパーツを選定し、データ連携など行うにはたいへんな手間と時間がかかります。この状況を知った開発者が、マーケティングに必要なシステムをパッケージ化して製品にしたのです。
BtoB向けのマーケティングオートメーションは、セミナーや展示会、メール配信、メルマガの制作・配信、Webコンテンツの作成・更新、名刺管理、キャンペーンの展開などマーケティングの各種活動を支援します。さらに、見込み客(ホットリード)を選別し、営業部門に引き渡すことができます。
日本でのBtoB向けマーケティングオートメーションの普及状況
アメリカで2000年ころに開発されたBtoB向けマーケティングオートメーションですが、日本に入ってきたのは遅く、2013年から2014年にかけてのことです。2015年は国内マーケティングオートメーション元年とも呼ばれ、外資系のマーケティングオートメーションが本格的に進出してきただけでなく、国内でも開発されるようになりました。
それではどのような市場状況となっているのでしょうか。2014年の日本国内のマーケティングオートメーション市場は160億円前後といわれており、当初は外資系企業や先進的な中堅・大手企業の導入が中心でした。しかし、さまざまな業界でBtoB向け営業の強化が課題となり、「マーケティングオートメーション」がトレンドキーワードになるにつれ、多くのBtoB企業が関心を寄せるようになります。「待ち」のBtoB営業から、「攻め」のBtoB営業への移行が本格的に求められたのです。
2015年以降、マーケティングオートメーション市場は急成長を続けており、2020年には400億円まで上昇するという予想もあります。多くの分野でシュリンクしている日本市場において、BtoB向けマーケティングオートメーションは数少ない成長分野の1つです。世界市場においてもマーケティングオートメーションは成長が期待されており、その伸び率は年10%前後と予想されています。
BtoBマーケティングが不毛地帯だった日本
「日本の最大の弱点はマーケティング力」「日本のBtoB向けマーケティングオートメーションは一周遅れ」と紹介しましたが、アメリカと比較して、日本の遅れには著しいものがあります。そもそも、マーケティングという概念自体がアメリカで産まれたもので、その教科書もアメリカからの輸入でした。
それでも、日本でマーケティングが行われていなかったわけではありません。1980年代にはBtoC向け、すなわちエンドユーザー向けのマーケティングは活発に行われ、広告キャンペーンやDMの研究がなされていました。
しかし、BtoB向け、すなわち法人向け営業の分野では確立されていませんでした。マーケティングや営業支援部隊は存在し、展示会、セミナー、Webサイト、メールマガジン、カタログ作成、テレマーケティングなどは展開されていました。ところが、これらが個々に行われ、営業の現場につながっていませんでした。それぞれの担当が知恵を絞って効果的な施策を展開するのですが、一貫性がなく部分最適となっていたのです。
それでも、日本は製品力が強かったために、BtoBのマーケティング施策の弱みをカバーできたところがあります。集客力などそれぞれの施策が成功すれば評価され、良しとされました。一貫性のある全体最適化などは不必要でした。
これが一転して、見直されたのはリーマンショック後の深刻な不況期からです。それまでは、プリセールスあるいはマーケティング部門が不在で、営業部門だけが存在する企業も多くありました。BtoBビジネスにおいては、マーケティング支援がなくても、強力な営業能力を発揮することで受注できたのです。
これが不況になると状況が変わります。長期間に渡り密接な関係を築いてきたような顧客も、自社の業績の維持で精一杯になり、取引の停止なども相次ぎました。さらに、競争はグローバル化し、国内でも海外でもBtoB向けのマーケティングオートメーションを本格的に展開しているような欧米企業と競い合う必要が出てきたのです。こうした厳しい環境下で、日本のBtoB企業でも、マーケティングオートメーションに注目するようになりました。
BtoB企業でのマーケティングと営業の分業
遅ればせながら日本のBtoB企業も、マーケティングオートメーションの有効性が認識されるようになり、導入を検討する企業が増加しました。このため、2015年から2016年にかけて、BtoB企業でのマーケティングオートメーションの導入が広がりつつあります。
また、組織的な側面で考えても、リーマンショック以降、日本のBtoB企業では、マーケティング部門を新設する企業が増えてきました。それまでは、営業部門が兼務をしていたり、広報部門が担当していたマーケティングを独立させることで、専門性を高めるとともに、よりBtoB営業の成果に結びつけようとしているのです。
マーケティング部門を中心として運用が進められるマーケティングオートメーションは、どの企業がWebサイトへアクセスしてきたか、誰がメールを開封してWebサイトへアクセスしてきたか、その後どのページを何回閲覧しているか、などを把握して、見込み度の高いリードを選別。営業部門に引き渡すことができます。
さらには、その後の営業活動の成果をフィードバックしてもらうことで、リードの精度等を確認しながら、PDCAサイクルを回して、改善していくことが必要です。しかし、マーケティングオートメーションを導入しても、営業部門がSFAを導入しておらず、人手に頼った管理をしているようでは正確なフィードバックを得ることができません。また、SFAとマーケティングオートメーションが連携できず、データの受け渡しができないといった問題が生じている例も少なくありません。このため、SFA機能とマーケティングオートメーション機能を併せ持ったツールを導入する企業も見られるようになってきました。
また、マーケティングオートメーションを導入しても、活用せず放置しているBtoB企業も見られます。マーケティングオートメーションは導入ではなく、導入後のBtoBの営業活動に活かすことに価値があります。マーケティングオートメーションの説明を聞いて、それだけで売上が上がると期待した経営層によくある、典型的な失敗例です。これは、SFAでもよく見られる例です。
活用されていない原因は使いづらいことも要因の一つとなっています。アメリカ発祥の概念だけに、理解も設定・操作も困難です。自社だけでは対応できず、結局コンサルタントに依頼して、高価な投資になってしまったという失敗例もあります。
まとめ
ツールの特長と使いやすさを確認する
BtoB向けマーケティングオートメーションを効果的に活用することができれば、マーケティング部門と営業活動を密接に結びつけ、売上の拡大を図ることが可能です。また、取り引き情報を活用することで、顧客の囲い込みや満足度の向上も実現できます。
このBtoB向けマーケティングオートメーションは海外製品が中心に提供されていましたが、日本企業に即した国内ベンダーが提供するツールも見られるようになりました。たとえば、日本はマーケティング部門のリソースが不足しているBtoB企業が多いことから、シンプルで運用しやすいツールが登場したり、SFAだけではなく名刺管理システムとも連携できるようなツールも出てきています。
Web時代のBtoBマーケティングにおいて、マーケティングオートメーションはますます不可欠なものとなっていくことが予想されます。しかし、マーケティングオートメーションは導入さえすれば効果が出るといったものでもありません。必要となる機能や果たすべき役割を考えた上で、自社に最適なツールの導入を検討しましょう。