デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)とは?11項目の意味と実践方法を解説

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    DXを本格的に進めたいが、何から着手すべきか迷っていませんか?

    本記事では「DX推進ガイドライン(現・デジタルガバナンス・コード2.0)」の全体像と11項目のチェックポイント、具体的な活用法までをわかりやすく解説します。

    制度の変遷や実務とのつながりを整理し、貴社のDX推進に役立つ情報を網羅しています。

    DX推進ガイドライン(現・デジタルガバナンス・コード2.0)とは?

    日本企業がデジタル変革(DX)を進めるうえで、道しるべとなる「DX推進ガイドライン」。これは、単なるチェックリストではなく、企業の経営者や実務担当者が「何を基準に、自社のDXの現状を見直し、どう前に進めていくべきか」を示した指針です。現在では「デジタルガバナンス・コード2.0」に統合されていますが、その原型であるDX推進ガイドラインの考え方は今もDX戦略の根幹に息づいています。この章では、その背景や意義、制度改定による変化について解説します。

    DX推進ガイドラインの目的と背景

    日本の多くの企業が「デジタル技術を活用しなければ」と口では言いながら、実際のところ何をどう変えるべきか、明確にできずにいる――そんな現状を受けて、経済産業省が2018年に示したのが「DX推進ガイドライン」です。

    このガイドラインの目的は、企業が自らのDXの成熟度を把握し、どこに課題があるのかを明確にし、実効性のある改善策を講じることにあります。とくに経営者の関与やIT基盤の見直しなど、DXの本質的な推進力となる11の観点を提示し、「何から始めるべきか分からない」という企業にとっての羅針盤となることを目指しました。

    当時は「2025年の崖」とも呼ばれる危機が注目され、旧態依然としたIT資産や組織文化のままでは、日本企業がグローバル競争に取り残されるという危機感が背景にありました。

    誰が策定したのか?経済産業省の狙い

    このガイドラインは、経済産業省 商務情報政策局が中心となって取りまとめたもので、企業の経営層を明確に対象としています。つまり、単に情報システム部門だけの話ではなく、経営戦略レベルの課題としてDXをとらえるよう促している点が大きな特徴です。

    経産省はこれをもとに、さらに詳細なチェックツールである「DX推進指標」を開発し、企業が自己診断できる仕組みも提供しました。これにより、定性的な「できている気がするDX」ではなく、客観的に"進んでいる"と言えるDXを目指せるように設計されています。

    また、各項目には「なぜそれが必要なのか」「どのように考えるべきか」といった背景説明も加えられており、単なる指示書ではなく、DXの哲学的な側面にまで踏み込んでいるのが特徴です。

    デジタルガバナンス・コード2.0への統合と違い

    2020年には、このDX推進ガイドラインをさらに発展させた「デジタルガバナンス・コード」が登場し、2022年には「2.0」へとバージョンアップされました。現在では、このデジタルガバナンス・コード2.0が、経営におけるDXの基本的な行動規範と位置づけられています。

    ガイドラインとコードの主な違いは、位置づけとスコープの広さにあります。DX推進ガイドラインがあくまで「各企業が自社の状態を自己点検するための手引き」だったのに対し、デジタルガバナンス・コード2.0は、経営ガバナンスそのものにDXを組み込むことを求めるものです。

    たとえば、有価証券報告書での開示が求められるようになったことで、コード2.0は法的・制度的な側面も持ち始めています。一方で、DX推進ガイドラインで提示された11項目の観点自体は、今でも「コード2.0の中核要素」として位置づけられており、旧ガイドラインの思想は完全に失われたわけではありません。

    このように、呼び名は変わっても、本質はつながっている――それがDX推進ガイドラインからデジタルガバナンス・コード2.0への変遷なのです。

    DX推進ガイドライン(現・デジタルガバナンス・コード2.0)の11項目

    DX推進ガイドラインには、企業がDXを進めるうえでチェックすべき「11の重要な観点」が示されています。これらは、単なる技術論にとどまらず、経営戦略から組織体制、IT資産の見直しまで、企業活動全体に及ぶ視点です。

    現在ではデジタルガバナンス・コード2.0に統合されていますが、11項目の考え方はその中核にあり続けています。ここでは、その11項目をわかりやすく解説していきます。

    1. 経営戦略・ビジョンの提示

    企業がDXを本気で推進するには、まず経営層自身が「なぜDXが必要か」「どこを目指すのか」といったビジョンを明確に示すことが出発点になります。

    単なる効率化やデジタル化ではなく、ビジネスモデルをどう変革するかという問いに対して、自社なりの戦略的な答えを持つことが求められます。

    2. 経営トップのコミットメント

    DXは現場だけでは進みません。経営トップが明確な意思を持ち、社内外に対して強いメッセージを発信し続けることが重要です。

    特に、既存の業務や慣習を変える際には反発も伴います。そのときに旗を振るのがトップでなければ、変革は形だけで終わってしまいます。

    3. DX推進のための体制整備

    DXの推進には、専任の責任者やチームの設置が不可欠です。IT部門に丸投げせず、事業部門と連携した横断的な体制を構築することで、現場と戦略の乖離を防ぎます。

    また、外部パートナーや専門人材の活用も視野に入れた、柔軟で実行力のある体制設計が求められます。

    4. 投資などの意思決定の在り方

    DXには一定の初期投資が伴います。問題は、その投資判断を従来の延長線で行うと、革新的な取り組みが実行できなくなることです。

    将来の成長や変化への対応力を重視した、新しい評価軸を経営判断に取り入れる必要があります。

    5. スピーディーな変化への対応力

    変化のスピードが速い今、じっくり検討してから動くやり方では間に合いません。

    試行錯誤を前提とした「アジャイルな開発・改善」ができる組織文化と、それを支える仕組みづくりが不可欠です。

    6. 全社的なITシステム構築の体制

    部門ごとにバラバラなシステムを使っていると、データ連携や業務の最適化が難しくなります。

    全社視点でのIT基盤を再設計し、統一性と柔軟性を両立するアーキテクチャを構築する必要があります。

    7. IT構築に向けたガバナンス

    新たなIT投資や構築の際には、ガバナンスの仕組みが不可欠です。

    特定部門や個人の判断でシステムを導入してしまうと、後々の維持管理や統合に支障が出るため、経営レベルでの意思決定プロセスとチェック体制が必要です。

    8. ベンダー丸投げを防ぐガバナンス

    よくある失敗例が、「ITベンダーにすべてを任せてしまう」ケースです。

    システム構築や運用の本質は、自社の業務や戦略と深く結びついています。内製化や共創の姿勢を持ち、主体的にプロジェクトをリードする体制が問われます。

    9. 事業部門のオーナーシップと要件定義力

    DXを現場に定着させるには、事業部門が単なる「ユーザー」ではなく、プロジェクトの当事者として責任を持つ必要があります。

    そのためには、現場の課題を正しく整理し、システム要件として言語化する力も求められます。

    10. IT資産の分析・評価と仕分け

    古くなったシステムが複数存在し、どこを更新し、どこを廃止すべきか分からない――そんな状況に陥っている企業は少なくありません。

    まずは現状のIT資産を棚卸し・可視化し、その価値やリスクを定量的に評価することから始めましょう。

    11. 刷新後ITシステムの変化追従力

    DXは「完成して終わり」ではありません。新しいビジネスモデルや業務に対応するため、システムも継続的に変化に追従できる設計が求められます。

    柔軟な構造と拡張性を持たせ、将来の変化にも対応できるIT基盤づくりが重要です。

    ガイドラインの活用ステップと実務への落とし込み方

    DX推進ガイドライン(現・デジタルガバナンス・コード2.0)は、読み物として眺めるだけでは意味がありません。

    企業として重要なのは、「自社の現状に引き寄せて、どのように行動に落とし込むか」です。

    ここでは、11の観点を現場で活かすための4つのステップを紹介します。

    Step1:自社の現状を把握する

    まずは自社がどこに立っているのか、冷静に見つめ直すことから始めましょう。

    DX推進ガイドラインでは、11項目を軸に自己評価ができるようになっています。

    この段階での目的は、理想と現実のギャップを見える化することです。

    客観的に振り返るために、DX推進指標などの補助ツールを併用すると、定量的な評価も可能になります。現場の感覚だけに頼らず、経営層と実務層が共通認識を持てるようにすることが重要です。

    Step2:課題を洗い出し、対策を整理する

    現状把握ができたら、次は「どの項目で遅れているのか」「なぜその状態になっているのか」を分析します。

    重要なのは、技術や人材の不足だけでなく、組織文化や意思決定のクセといった構造的な課題にも目を向けることです。

    たとえば、「DX推進のための体制整備ができていない」と感じた場合、それは人材不足が原因なのか、あるいは経営の関心が薄いのかによって打つべき対策が変わってきます。

    Step3:優先順位をつけてロードマップを描く

    すべての課題を一度に解決することは現実的ではありません。

    そこで、影響度や実現可能性を踏まえながら、着手すべきテーマの優先順位をつける必要があります。

    このステップでは、理想の状態をいくつかの中間ゴールに分解し、段階的に進めるためのロードマップを作成します。

    無理のない工程を設定しながら、短期・中期・長期で進捗を管理することが、継続的な実行力を生みます。

    Step4:アクションを実行し、PDCAを回す

    計画を描いたら、いよいよ実行フェーズです。

    ただし、計画通りに物事が進むことは少なく、小さく試して改善しながら前に進む姿勢が欠かせません。

    ここで役立つのが「PDCAサイクル」です。定期的に現場や関係者と進捗を確認し、必要に応じて目標や施策を見直すことで、プロジェクトが形骸化するのを防げます。

    また、社内外の関係者と進捗や成果を共有し、成功体験を蓄積することで、組織全体に前向きな動きが広がっていきます。

    DX推進を成功に導くためのポイント

    DX推進ガイドラインやデジタルガバナンス・コード2.0を活用することで、方向性は見えてきます。

    しかし、それを実際に形にしていくには、人・組織・文化といった「現場の現実」に寄り添った工夫が不可欠です。

    この章では、DXを成功に導くために押さえておきたいポイントを紹介します。

    経営者のリーダーシップと社内巻き込み

    DXは企業変革の一大プロジェクトです。だからこそ、トップの明確な意思表示と継続的な関与が何よりも重要になります。

    現場任せでは、既存業務の延長で終わってしまいがちです。経営者自らがDXの目的を語り、社内に「これは本気の取り組みだ」という空気を浸透させることが、最初の壁を突破する鍵となります。

    また、関係部門を巻き込むには、トップダウンとボトムアップの両方が必要です。

    現場の不安や課題に耳を傾けながら、柔軟に進める姿勢が信頼を生みます。

    スモールスタートと社内文化の変革

    一度にすべてを変えようとすると、現場の混乱や反発を招きやすくなります。

    だからこそ、まずは取りかかりやすいテーマから着手するスモールスタートが効果的です。たとえば、ルーチン業務のデジタル化や、紙書類の電子化といった、成果が見えやすい施策から始めるのも一つの手です。

    小さな成功を積み重ねることで、社内に「変化は可能だ」という空気が生まれます。これが、次の取り組みへの抵抗感を和らげ、DXの文化を根づかせる第一歩となります。

    外部の専門人材や支援機関を活用する

    自社だけでDXを進めようとすると、専門知識や経験の不足に直面することがあります。

    そんなときは、外部のデジタル人材や支援機関との連携を前向きに検討しましょう。

    中小企業支援機関や地域DX推進拠点、専門のコンサルティング会社などを活用すれば、実践的なノウハウや客観的な視点を得ることができます。

    特に初期フェーズでは、第三者の視点が「見落としていた課題」や「内製にこだわりすぎるリスク」に気づくきっかけにもなります。

    長期視点と継続的な改善プロセス

    DXは短距離走ではなく、長距離走です。

    1年や2年で完結するプロジェクトではなく、変化する時代に柔軟に対応し続ける体質をつくることこそが真のゴールです。

    そのためには、年度単位の目標だけでなく、5年・10年後を見据えたビジョンと、それを支える組織体制が欠かせません。

    また、状況の変化に応じて計画を見直し、PDCAを回しながら進化を続ける姿勢が、DXの成果を持続可能なものにしていきます。

    参考にすべき関連資料とリンク集

    DX推進ガイドラインやデジタルガバナンス・コード2.0をより深く理解し、自社での実践に活かすためには、信頼できる公的資料や関連文書をあわせて参照することが重要です。

    ここでは、実務者や経営層が押さえておきたい代表的な参考資料を紹介します。

    DX推進指標とその活用方法

    経済産業省が公開している「DX推進指標」は、DXの成熟度を客観的に評価するためのセルフチェックツールです。

    企業が自らの現在地を知り、課題と優先度を可視化するために設計されています。

    特に、ガイドラインの11項目と連動している点が特徴で、具体的な設問形式になっているため実践に移しやすいのがメリットです。

    年1回の定期的な自己診断や、他社とのベンチマークにも活用できます。

    経済産業省「DX推進指標」

    DXレポート(1.0〜2.2)との関連性

    DX推進の危機感を国全体で共有するきっかけとなったのが、2018年に発表された「DXレポート(通称:2025年の崖)」です。

    その後、継続的にバージョンアップされており、最新の**「DXレポート2.2」では、企業の成功事例や人材戦略、サステナビリティとの連動**といったテーマまでカバーされています。

    これらのレポートは、制度の背景にある問題意識や国としての戦略的な方向性を理解するのに役立ちます。

    経済産業省「DXレポート」シリーズ

    デジタルガバナンス・コード2.0の全文PDF

    現在、DX推進ガイドラインの役割を引き継いでいるのが「デジタルガバナンス・コード2.0」です。

    ガイドラインの精神をベースに、ESGや企業開示の視点も含めた経営ガバナンスの基準として整備されています。

    有価証券報告書への反映も視野に入るなど、企業としての説明責任にも影響するため、経営層はぜひ一度目を通しておくべき資料です。

    デジタルガバナンス・コード2.0(PDF)

    まとめ|デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)を実務に活かすために

    デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)は、単なる制度文書ではなく、企業が変革を遂げるための実践的な指針です。経営者の視点から現場の行動にまで落とし込めるよう、11項目のチェックポイントや活用ステップが丁寧に設計されています。

    ポイントは、知識として「知る」にとどまらず、自社の状況と照らし合わせて「どう動くか」を決めることです。まずは小さなアクションから始めて、社内に変化の空気をつくり出すところからスタートしてみてください。制度の背景にある想いや、現場での工夫をしっかり理解しながら、未来につながるDXの第一歩を踏み出しましょう。

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