ディレクトリトラバーサル攻撃とは?仕組みから企業が取るべき対策まで徹底解説
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ディレクトリトラバーサル攻撃は、企業のセキュリティを脅かす深刻な脆弱性の一つです。攻撃者はWebアプリケーションのパスを不正に操作し、本来アクセスできない機密ファイルやシステム情報を取得します。この記事では、ディレクトリトラバーサル攻撃の仕組みと実際の被害事例を紹介し、企業が取るべき具体的な対策方法について解説します。
ディレクトリトラバーサル攻撃とは
ディレクトリトラバーサル攻撃(Directory Traversal Attack)は、Webアプリケーションやサーバーに対して行われるセキュリティ攻撃の一種です。この攻撃は、ユーザーがシステム内の不正なディレクトリやファイルにアクセスするために、Webアプリケーションのファイルパスを不正に操作する手法です。攻撃者は、URLや入力フィールドに「../」などの特殊な文字を組み合わせることで、アプリケーションがアクセスすべきディレクトリの外にあるファイルを取得します。企業におけるディレクトリトラバーサルの影響
ディレクトリトラバーサル攻撃が企業のシステムに成功した場合、攻撃者は本来アクセスできないはずのファイルやディレクトリにアクセスすることができます。この攻撃により、機密情報やユーザーの個人情報、システム設定ファイルなどが漏洩するリスクが高まります。また、データの改ざんやサービス停止、悪意のあるコードの挿入が行われる可能性もあり、企業にとって大きなセキュリティリスクとなります。さらに、これにより企業の信頼性やブランド価値が損なわれる恐れもあります。ディレクトリトラバーサル攻撃の仕組み
攻撃者がどのようにシステムを悪用するか
ディレクトリトラバーサル攻撃は、Webアプリケーションがユーザーの入力データを適切に検証しない場合に発生します。攻撃者は、URLやフォーム入力に「../」というパターンを利用することで、システム内の他のディレクトリへ遷移しようとします。この「../」は、親ディレクトリを指し示す相対パスであり、これを繰り返すことで、システムのルートディレクトリやそれに付随する機密ファイルにアクセスすることが可能になります。攻撃者が悪用する代表的な方法としては、ファイルのアップロード機能を使い、パスを操作してシステム内の重要なファイルを取得したり、システム設定を変更したりするケースがあります。また、場合によっては、攻撃者がシステム内部でリモートコード実行を行うための入り口としてこの脆弱性を利用することもあります。
攻撃の流れと例
①入力フィールドに不正なパスを入力
ディレクトリトラバーサル攻撃の基本的な方法は、Webアプリケーションに入力されるパス(ファイル名やディレクトリ名)を悪用することです。Webアプリケーションは、ユーザーからの入力を受けて、特定のファイルやディレクトリにアクセスすることが多いです。たとえば、ユーザーがWebサイトで画像を表示しようとした場合、その画像のファイル名やパスが入力され、サーバーがその画像を検索して返します。しかし、Webアプリケーションがユーザー入力を適切にチェックしない場合、攻撃者はその入力フィールドに特別なパターンを追加することができます。そのパターンが「../」という文字列です。これがディレクトリトラバーサルの鍵となります。
「../」は、ファイルシステムにおいて「親ディレクトリ(上位のディレクトリ)」を示す相対パスのシンボルです。これを入力することで、攻撃者は意図的にファイルシステムを遡って、Webアプリケーションがアクセスできないはずのディレクトリやファイルに到達することができます。
②重要なファイルにアクセス
ファイルパスが適切に検証されていない場合、攻撃者はシステムの設定ファイルやログファイル、ユーザー情報が保存されている場所にアクセスできます。これにより、システムの脆弱性が露呈し、機密情報が漏洩する危険性が高まります。③結果としての被害
攻撃者が取得した情報を悪用して、更なる攻撃を仕掛けたり、データを改ざんしたり、システムを乗っ取る可能性があります。これにより、企業のサービスが停止したり、深刻なデータ漏洩が発生したりすることがあります。ディレクトリトラバーサルのリスクと被害
企業が直面するリスク
ディレクトリトラバーサル攻撃は、企業にとって多大なリスクをもたらします。主なリスクには以下が挙げられます。・機密情報の漏洩
攻撃者がシステム内の機密ファイルやユーザー情報にアクセスすることで、情報漏洩が発生します。この場合、企業の信頼性が大きく損なわれ、法的・財務的な責任を問われる可能性もあります。・サービスの中断
システムに不正アクセスされることで、サービスが停止するリスクもあります。特に、企業の業務に欠かせないシステムがダウンすると、業務が滞り、顧客に対する信頼を失う恐れがあります。・改ざんやデータ破壊
攻撃者がシステムの設定ファイルや重要なデータを改ざんすることで、企業の運営に致命的な影響を及ぼすことがあります。さらに、攻撃者がマルウェアを仕込んだ場合、長期的な影響を及ぼすことになります。実際に発生したディレクトリトラバーサル攻撃の事例
実際にディレクトリトラバーサル攻撃が企業に対して行われた例として、過去には多くの有名企業が被害を受けています。たとえば、ある大手オンラインショッピングサイトでは、ディレクトリトラバーサル攻撃によって、攻撃者がユーザーの個人情報を不正に取得した事例があります。攻撃者は、URLに「../」を挿入し、セキュリティが脆弱なファイルシステムを突破して、データベースのバックアップファイルにアクセスしました。これにより、数百万件のユーザー情報が流出し、大きな問題となりました。他にも、企業のインフラ管理ツールがディレクトリトラバーサルに対して脆弱であったため、攻撃者が内部システムの管理ファイルを改ざんし、バックドアを設置したという事例も報告されています。このような攻撃が成功すると、システム全体が危険にさらされ、修復には膨大なコストと時間がかかります。
ディレクトリトラバーサル対策方法
ディレクトリトラバーサル攻撃を防ぐためには、セキュリティにおけるベストプラクティスを実施し、適切な対策を講じることが重要です。以下に、企業が取り入れるべき具体的な対策方法を説明します。セキュリティのベストプラクティス
ディレクトリトラバーサル攻撃に対する最も効果的な防止策は、セキュリティに関してのベストプラクティスを守ることです。これには、アプリケーションの設計段階からセキュリティを意識することが含まれます。例えば、以下の対策が有効です。・最小権限の原則
アプリケーションやユーザーには、必要最低限の権限のみを付与します。これにより、攻撃者が不正アクセスを試みた場合でも、システム全体に及ぶ被害を最小限に抑えることができます。・ファイルシステムの保護
アプリケーションがアクセスするファイルやディレクトリを適切に設定し、通常のユーザーがアクセスできない場所にはアクセス権限を設定します。これにより、ディレクトリトラバーサル攻撃が成功しても、機密ファイルへのアクセスが制限されます。・エラーメッセージの適切な管理
システムのエラーメッセージにファイルパスやシステムの内部情報を含めないようにします。これにより、攻撃者がエラーメッセージを通じてシステムの構成を知ることができなくなります。ソフトウェアの更新とパッチ管理
ディレクトリトラバーサル攻撃を防ぐためには、システムやアプリケーションのソフトウェアを常に最新の状態に保つことが不可欠です。脆弱性が発見されると、ベンダーはその脆弱性を修正するためのパッチをリリースします。企業は以下の手順を実行するべきです。・定期的なパッチの適用
サーバーやアプリケーション、ライブラリの脆弱性が発見された場合、速やかにパッチを適用します。特に、オープンソースのソフトウェアやサードパーティ製のコンポーネントについても、パッチの管理を徹底します。・自動更新の導入
可能であれば、ソフトウェアの自動更新機能を利用して、セキュリティ更新が漏れなく適用されるようにします。これにより、最新のセキュリティパッチが常に反映され、脆弱性を悪用されるリスクを軽減できます。入力検証とサニタイズ
ディレクトリトラバーサル攻撃を防ぐためには、ユーザーからの入力を適切に検証し、サニタイズ(無害化)することが非常に重要です。Webアプリケーションはユーザーから入力されたデータをそのまま処理することが多いため、不正なデータを取り込まないようにする必要があります。具体的な対策は以下の通りです。・入力検証
ユーザーが入力するデータ(URL、パス、ファイル名など)を適切に検証します。例えば、ファイル名に「../」や「..\」などの相対パスを含んでいないかをチェックし、不正な入力は拒否します。また、ファイル名やパスに許可されている文字のみを許容するように制限します。・サニタイズ
入力されたデータをサニタイズすることで、特殊な文字や記号を無害化します。例えば、「../」や「%2e%2e%2f」などを無効にする処理を行い、攻撃者が意図した不正なパス操作を無効化します。・正規表現の利用
パスやファイル名の検証には、正規表現を使って、不正な文字列やパターンを事前にフィルタリングすることが有効です。アクセス制御の強化
アクセス制御は、ディレクトリトラバーサル攻撃を防ぐために重要な役割を果たします。アプリケーションの設計段階から、ファイルシステムへのアクセスを適切に制限し、許可されたユーザーのみがアクセスできるようにします。具体的な対策は次の通りです。・アクセスリストの設定
ファイルシステムへのアクセス権限を適切に設定し、各ユーザーやアプリケーションのアクセスできるディレクトリを制限します。特に、機密性の高いデータが保存されているディレクトリには、厳格なアクセス制御を実施します。・ファイルパスの暗号化
アプリケーション内でファイルパスを直接使用するのではなく、暗号化したり、エイリアスを使用してアクセスすることを検討します。これにより、攻撃者がパスを不正に推測してアクセスすることを防ぎます。・認証と認可の強化
アクセス制御リスト(ACL)やロールベースアクセス制御(RBAC)を利用して、ユーザーやアプリケーションのアクセス権限を明確に管理します。さらに、適切な認証と認可を行い、最小限の権限でアクセスできるようにします。ツールを活用して効果的なディレクトリトラバーサル対策を
ディレクトリトラバーサル攻撃から企業を守るためには、以下の対策を継続的に実施することが重要です。定期的なセキュリティ監査の重要性
企業の情報システムは常に新たな脅威にさらされています。そのため、定期的なセキュリティ監査を実施し、システムの脆弱性や不備を早期に発見・修正することが不可欠です。これにより、ディレクトリトラバーサル攻撃を含むさまざまな攻撃手法に対する防御力を高めることができます。ハンモック社の統合型IT運用管理ツール「AssetView」は、外部からの脅威や内部からの情報漏洩リスクを低減するための多彩な機能を提供しています。例えば、マルウェア対策やセキュリティアップデートの管理、Webアクセス制限などの機能を活用することで、システムのセキュリティレベルを向上させることが可能です。