【経営者必見】サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0の活用法とは?
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現代の企業経営において、サイバーセキュリティは経営戦略そのものと位置付けられるべき重要な要素です。日本政府が発行した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」は、急速に変化するデジタル社会や新たな脅威に対応するため、これまでの内容を深化・拡充した形で発表されました。本コラムでは、この最新版ガイドラインのポイントを解説し、経営者が実践に活かすための具体的な方法を提案します。
参照:https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/mng_guide.html
1.サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0の背景と新たな特徴
2015年に初版が策定されたサイバーセキュリティ経営ガイドラインは、企業のデジタル化進展に伴う脅威に対応する目的で経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)から発行されました。最新版であるVer 3.0は、2023年3月に発表され、次のような背景を反映しています。
サイバー攻撃の高度化・複雑化:ランサムウェア攻撃やサプライチェーン攻撃の増加
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展:新技術導入に伴う新たなリスク
国際的なセキュリティ要件の強化:海外のパートナー企業との協業におけるセキュリティ基準の重要性
主な改訂ポイント:
経営者の戦略的役割の明確化
経営者がサイバーリスクにどう向き合い、経営判断に活用するべきかをより詳細に記述。サイバーセキュリティガバナンスの強化
リスク管理体制やモニタリングの具体的手法が追加。DX推進とセキュリティの両立
クラウドサービスやIoTデバイスの活用を進める中で、適切なセキュリティ対策を組み込むための考え方を提示。サプライチェーン全体の安全性確保
自社だけでなく、取引先や外部サービスプロバイダとの連携を含む包括的な対策が強調されています。2.サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0に基づく経営者の役割
最新版ガイドラインでは、経営者に求められる役割が一層明確化され、次の3つの視点が特に強調されています。
1. 経営戦略としてのサイバーセキュリティ
ガイドラインでは、サイバーセキュリティを単なる防御手段ではなく、事業成長を支える戦略的要素と位置付けています。経営者は以下のような対応を求められます。
サイバーリスクを経営リスクとして認識
サイバー攻撃が企業価値や顧客信頼にどのような影響を与えるかを理解。予算とリソースの確保
サイバーセキュリティに必要な投資を積極的に実行。定期的なリスク評価
自社のリスク状況や業界動向を踏まえた対策の見直しを行う。2. ガバナンスとリーダーシップの発揮
ガイドラインは、経営者がサイバーセキュリティ対策の「旗振り役」となることを強調しています。これは以下の要素を含みます。
責任体制の明確化
役員レベルでサイバーセキュリティの責任者を指名。社内外の透明性向上
セキュリティ対策の進捗や問題点を取締役会やステークホルダーに報告。3. サプライチェーン全体への対応
取引先や外部プロバイダがサイバー攻撃の入口となるケースが増加しているため、次のようなアプローチが必要です:
サプライヤー選定時のセキュリティ要件の明確化
取引先とのセキュリティ契約の策定
外部プロバイダのセキュリティ監査
3.サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0に基づく具体的な実践方法
1. DX環境へのセキュリティ統合
DX推進においては、クラウドサービスやIoTなどを導入する際にセキュリティを考慮した設計が重要です。以下の取り組みが推奨されます。
ゼロトラストモデルの導入
全てのアクセスを検証する方針を採用。新技術の導入リスク評価
新たなITインフラやソリューションを導入する前に、セキュリティリスクを評価。2. セキュリティ人材の育成と確保
人的要素がサイバーセキュリティの鍵となります。
具体的には:
従業員向けセキュリティ教育を年間計画に組み込む。
専門知識を持つセキュリティ担当者を採用し、内部に知見を蓄積。
3. サプライチェーンとの協力強化
以下の施策でサプライチェーン全体の安全性を確保します。定期的なセキュリティ評価の実施。
サプライヤーやパートナー企業への教育や支援。
インシデント発生時の連携フロー構築。
4. インシデント対応体制の高度化
サイバー攻撃に備えるため、事前計画が不可欠です。以下の手順を参考にしてください。
シナリオベースの訓練
ランサムウェア攻撃やデータ漏洩など、具体的なシナリオに基づいた対応訓練を実施。迅速な情報共有
社内外の関係者間で情報を共有するプロセスを構築。4.成功事例:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0を活用した企業の取り組み
事例1:製造業のDX推進とセキュリティ強化
ある製造業企業では、DXの一環としてIoT技術を導入。しかしその過程で外部ネットワーク経由の侵入リスクが判明。ガイドラインに基づき、以下の措置を講じました。結果として、DX推進と同時にセキュリティリスクを低減し、製造効率の向上にも成功しました。
ネットワーク分離を徹底。
IoTデバイスの定期的なセキュリティ更新をスケジュール化。
ゼロトラストモデルを導入。
事例2:サプライチェーン全体の安全性向上
大手物流企業では、サプライヤーからの攻撃を受けた過去の事例を教訓に、以下の取り組みを行いました。これにより、取引先との信頼関係が強まり、取引量の拡大に繋がりました。
取引先企業とのセキュリティ研修を共同開催。
契約時にサイバーセキュリティ条項を明記。
サプライチェーン全体でのシミュレーション訓練を実施。
5.サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0とプラクティス集の実践的指針
さらに具体的な取り組みを支援するため、IPAから実例を基にしたプラクティス集が公開されています。この資料では、重要10項目を実践する手順、課題への対応策、用語集などを提供し、経営層やCISOのサポートを強化しています。
詳しくは公式サイトをご覧ください:https://www.ipa.go.jp/security/economics/csm-practice.html
「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」のプラクティス集には、海外拠点の情報保護事例が紹介されています。ある企業では、各国のコンプライアンス対応を拠点任せにした結果、情報漏洩リスクが顕在化。これを受け、拠点別チェックリストを導入し管理体制を統一しました。海外拠点を持つ企業にとって、こうしたリスク管理は不可欠です。弊社が提供するAssetView でも同様の課題に対応する事例が複数ございます。今回は「株式会社Arent」様の事例をご紹介します。
株式会社Arent様
事業拡大に伴いベトナム子会社を設立した同社。エンジニアの採用を海外へ拡大する際、労務管理体制強化の必要性から、統合型IT運用管理ツール「AssetView CLOUD」を導入しました。このソリューションにより、国内外の従業員の業務状況を一元管理し、効率的な労務管理を実現。建設業界のDX推進を支援する同社の成長を加速させる基盤として期待されています。まとめ
「サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver 3.0」は、経営者がサイバーリスクに戦略的に向き合うための道標として重要な役割を果たします。特にDX推進とセキュリティの両立や、サプライチェーン全体のリスク管理に注目が集まる中、ガイドラインの実践は競争力の強化にも直結します。
今後の経営環境で成功を収めるためには、セキュリティを「防御」ではなく「投資」と捉え、組織全体でリスクに対応する姿勢が求められます。このガイドラインを参考に、自社の取り組みを見直し、持続可能な成長を目指しましょう。