ゼロトラストネットワークの基礎と導入メリット【クラウド時代の必須対策!】
- INDEX
-

サイバー攻撃の高度化やクラウド環境の普及により、従来の境界型セキュリティでは企業のデータを十分に保護できなくなっています。そこで注目されているのが「ゼロトラストネットワーク」です。ゼロトラスト、すなわち「決して信頼せず、常に検証する」という原則のもと、内部・外部を問わずすべてのアクセスを厳格に管理するこのセキュリティモデルは、クラウド時代において必須の対策となりつつあります。
本記事では、ゼロトラストの基本概念や導入メリット、実装のポイントについて詳しく解説します。
ゼロトラストネットワークとは?
ゼロトラストの基本概念
ゼロトラストネットワークは、ネットワークセキュリティモデルの一つで、「決して信頼せず、常に検証する」ことを基本にしています。従来のセキュリティモデルでは、企業のネットワークの境界内にいるユーザーやデバイスは基本的に信頼され、アクセス制御はネットワークの外部からの攻撃に重点を置いていました。しかし、ゼロトラストは「境界を信頼しない」という新しいアプローチを採用し、ネットワーク内外のすべてのアクセスを検証します。ゼロトラストネットワークでは、企業内外のすべての接続元、ユーザー、デバイス、サービスに対してアクセスを一貫して管理・制御します。特に、ユーザーやデバイスがネットワークにアクセスする際に、各リクエストをリアルタイムで評価し、信頼性が確認されるまでアクセスを許可しません。これにより、企業内外のセキュリティリスクを最小限に抑えることができます。
従来の境界型セキュリティとの違い
従来型の境界型セキュリティモデルは、企業ネットワークの外部からの攻撃を防ぐことを主な目的としており、内部に入ってしまうとアクセスに制限を設けることが少ないという特徴があります。これは、企業内ネットワークがある意味「安全な領域」とみなされ、信頼されていたからです。しかし、サイバー攻撃の手法が進化し、特に内部からの脅威(例えば、マルウェア感染や従業員の誤操作など)が増加したことから、従来の境界型セキュリティモデルは限界を迎えています。ゼロトラストでは、ネットワーク内部であってもアクセスを徹底的に検証するため、従来型の「信頼された内部ネットワーク」という考え方を排除します。ネットワーク内外のすべてのリソースに対して常に認証・認可を行い、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを防ぎます。
ゼロトラストの原則
ゼロトラストネットワークの核心となる原則は、「Never trust, always verify(決して信頼せず、常に検証する)」です。この考え方は、すべてのアクセスリクエストに対して疑いを持ち、アクセスする際には常に検証を行うというものです。具体的には、ユーザー、デバイス、アプリケーションがアクセスを求めるたびに、その信頼性を評価し、必要な場合には多要素認証(MFA)やその他のセキュリティ機能を通じて検証します。このアプローチにより、外部からの攻撃だけでなく、企業内部の潜在的な脅威も検出し、早期に対処できるようになります。ゼロトラストは、アクセス権限が最小限に制限され、権限のないユーザーやデバイスがリソースにアクセスすることを防ぐため、リスクを大幅に軽減することができます。
なぜ企業にゼロトラストが必要なのか?
サイバー攻撃の高度化と内部脅威の増加
近年、サイバー攻撃はますます高度化しています。特に、フィッシングやランサムウェアなどの攻撃手法が進化し、企業ネットワークの外部だけでなく、内部にも深刻な脅威をもたらしています。攻撃者がネットワーク内部に侵入した場合、その存在に気づくのが遅れることが多く、企業にとって致命的な情報漏洩やシステム障害を引き起こす可能性があります。また、従業員やパートナー企業など内部の関係者による意図的・偶発的な情報漏洩や不正アクセスも増加しています。このような内部脅威を防ぐためには、アクセスの検証と監視を強化し、ゼロトラストの原則を適用することが不可欠です。
クラウド環境の普及による境界の消失
クラウドサービスの利用が進むにつれて、企業のネットワークの境界が曖昧になり、セキュリティの管理が難しくなっています。従来の境界型セキュリティモデルでは、企業のネットワーク内外を区別してセキュリティ対策を講じていましたが、クラウド環境ではリソースが分散され、アクセス場所やデバイスが多様化するため、従来のセキュリティ手法では十分に対応できません。ゼロトラストネットワークは、クラウド環境を含むすべてのアクセス元に対して一貫したセキュリティ基準を適用し、企業のリソースへのアクセスを管理・制御します。このように、境界が消失した環境でも強固なセキュリティを確保できるのがゼロトラストの大きな利点です。
テレワークの定着とエンドポイントセキュリティの課題
テレワークの普及に伴い、企業は従業員がどこからでもアクセスできる環境を提供する必要があります。しかし、これに伴いエンドポイント(PC、スマートフォン、タブレットなど)のセキュリティが大きな課題となっています。従来のセキュリティモデルでは、企業内のネットワークに接続されたデバイスを信頼し、外部からのアクセスにのみ重点を置いていましたが、テレワークが主流となると、企業外部のエンドポイントがリスクの対象となります。ゼロトラストは、テレワーク環境でも強力なアクセス制御を実現します。例えば、各デバイスのセキュリティ状態を常に確認し、脆弱性があるデバイスからのアクセスを制限することができます。これにより、リモートワークでも企業のネットワークに対して強固なセキュリティを保つことができます。
ゼロトラストネットワークの主な構成要素
ゼロトラストネットワークを効果的に実現するためには、いくつかの重要な構成要素を組み合わせて運用する必要があります。これらの要素は、アクセスの管理や認証・認可を強化し、ネットワーク全体のセキュリティを保護します。ID・アクセス管理
ID・アクセス管理(Identity and Access Management、IAM)は、ゼロトラストネットワークにおける基盤となる要素です。IAMは、企業内のすべてのユーザーとその権限を管理し、アクセス制御のポリシーを適用する仕組みを提供します。具体的には、ユーザーのIDを確立し、アクセス可能なリソースを必要最小限に制限します。これにより、不要な権限を持つユーザーによる不正アクセスのリスクを減少させることができます。IAMは、ユーザーがどのリソースにアクセスするか、どのデバイスからアクセスするか、アクセスする時間帯や場所などを細かく制御することを可能にします。このような精緻な制御を通じて、ゼロトラストネットワークはアクセスを継続的に監視し、セキュリティを強化します。
多要素認証(MFA)の活用
多要素認証(Multi-Factor Authentication、MFA)は、ゼロトラストネットワークにおいて必須のセキュリティ対策です。MFAは、ユーザーがログインする際に2つ以上の認証手段を要求します。これにより、万が一パスワードが漏洩した場合でも、不正アクセスを防ぐことができます。MFAには、通常のパスワードの他に、生体認証(指紋や顔認証)、ワンタイムパスワード(OTP)、認証アプリなどが利用されます。ゼロトラストネットワークでは、アクセス元の信頼性やリスクをリアルタイムで評価し、必要に応じて追加の認証を求めることでセキュリティを強化します。
ネットワークマイクロセグメンテーション
ネットワークマイクロセグメンテーション(Network Micro-Segmentation)は、ゼロトラストネットワークにおいてネットワーク内部のトラフィックを細かく分割し、各セグメントごとに異なるアクセス制御を適用する技術です。これにより、仮に内部のシステムが侵害された場合でも、攻撃者がネットワーク全体にアクセスできないように防止できます。各セグメントは、アクセスに必要な最小限の権限だけを許可する「最小権限の原則」に基づいて構築されます。これにより、攻撃の拡大を防ぎ、ネットワーク内の機密情報を守ることができます。
EDR/XDRによるエンドポイント防御
EDR(Endpoint Detection and Response)およびXDR(Extended Detection and Response)は、エンドポイントの脅威検出と対応を行うセキュリティ技術です。ゼロトラストネットワークでは、すべてのエンドポイント(PC、モバイルデバイス、IoTデバイスなど)を監視し、異常な動作を検出します。EDRは、リアルタイムで脅威を検知し、適切な対応策を講じることができます。XDRは、複数のセキュリティレイヤーを統合し、ネットワーク全体での脅威の検出・対応を強化します。これにより、エンドポイントから発生するリスクを早期に発見し、迅速に対処することが可能になります。
セキュアウェブゲートウェイ(SWG)とゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)
セキュアウェブゲートウェイ(SWG)とゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)は、外部からのアクセスを安全に管理するための技術です。SWGは、Webトラフィックをリアルタイムで検査し、悪意のあるサイトやコンテンツから企業を保護します。これにより、ユーザーがインターネットにアクセスする際に、潜在的な脅威を排除できます。一方、ZTNAは、ユーザーがネットワークにアクセスする際に、動的なアクセス制御を適用します。ZTNAは、ユーザーの認証状況やセキュリティ状態をリアルタイムで確認し、その条件に合致した場合のみアクセスを許可します。この技術により、リモートワーク環境でも高いセキュリティを確保できます。
ゼロトラスト導入のメリット
内部・外部の脅威に対する強固な防御
ゼロトラストネットワークは、内部および外部の脅威に対する強固な防御を提供します。すべてのアクセスリクエストを検証することで、不正アクセスやデータ漏洩を防ぎます。従来のセキュリティモデルではネットワーク内部が「安全」とされがちですが、ゼロトラストではネットワーク内外を問わずすべてのアクセスを管理します。ゼロトラストモデルによるアクセス制御の強化
ゼロトラストモデルは、アクセス権を最小限に制限し、リソースごとに異なるポリシーを適用します。これにより、権限のないユーザーやデバイスからのアクセスを防ぎ、企業のデータとシステムを守ります。クラウド環境やリモートワークとの親和性
ゼロトラストネットワークは、クラウド環境やリモートワークと親和性が高いセキュリティモデルです。リモートワーク環境でも、アクセス元やデバイスに対する厳格な管理が可能で、クラウドサービスを利用した場合でも企業データのセキュリティを守ることができます。ゼロトラスト導入のデメリット
初期導入のコストと運用負荷
ゼロトラストネットワークの導入には、初期投資が必要であり、既存のIT環境に対する大規模な見直しが求められます。また、運用には高度なスキルやリソースが必要となるため、企業にとっては運用負荷が増す可能性があります。社内IT環境の大幅な見直しが必要
ゼロトラストネットワークの導入には、既存のネットワーク構造やアクセス管理の見直しが必要です。これには、既存のセキュリティポリシーやツールの変更が伴い、導入後の運用や保守も新たな負担となることがあります。ゼロトラストネットワークの導入手順
ゼロトラストネットワークの導入は計画的に進める必要があります。以下の手順に従って、効果的にゼロトラスト環境を構築しましょう。既存のネットワークとアクセス管理の現状分析
まず、企業の現在のネットワークインフラとアクセス管理の現状を分析します。どのリソースにどのユーザーがアクセスしているのか、またそのアクセスが適切に管理されているかを確認します。この分析により、ゼロトラストの導入に必要なリソースやポリシーを洗い出すことができます。アクセス制御ポリシーの策定
アクセス制御ポリシーを策定し、各ユーザーやデバイスがアクセスできるリソースを定義します。このポリシーに基づいて、最小権限の原則を適用し、不要なアクセスを排除します。適切なセキュリティツールの選定
ゼロトラスト環境を構築するために必要なセキュリティツールを選定します。これには、IAM、MFA、EDR/XDR、SWGなどが含まれます。企業のニーズに合ったツールを選定し、導入準備を整えます。ゼロトラスト環境のテスト運用
ゼロトラストネットワークを本格的に導入する前に、テスト運用を行います。テスト環境で実際の運用をシミュレーションし、セキュリティポリシーやツールの有効性を確認します。問題があれば、適宜修正を加えていきます。全社展開と運用の最適化
テスト運用が成功したら、ゼロトラスト環境を全社に展開します。導入後は運用の最適化を図り、継続的な監視と改善を行います。定期的なレビューとポリシーの見直しを行い、セキュリティレベルを維持・向上させます。まとめ:ゼロトラストネットワークは企業の未来を守る
ゼロトラストネットワークは、現代のセキュリティ戦略において重要な要素となっています。従来の境界型セキュリティモデルでは対応しきれない高度化するサイバー攻撃や内部脅威に対抗するため、ゼロトラストの導入が求められています。企業がゼロトラストを効果的に実施するためには、包括的なIT資産管理とセキュリティ対策が必要です。その中で、ハンモック社の「AssetView」は、以下のような機能を提供し、ゼロトラストの実現を支援します。
これらの機能を活用することで、企業はゼロトラストネットワークの構築に必要な基盤を整えることができます。しかし、各企業の業態や規模により、最適な導入計画は異なります。そのため、現状のIT環境やセキュリティ要件を十分に分析し、適切な戦略を立てることが重要です。
また、セキュリティは一度導入して終わりではなく、継続的な運用と改善が不可欠です。新たな脅威や技術の進歩に対応するため、定期的な見直しとアップデートを行い、常に最適なセキュリティ体制を維持することが求められます。
ゼロトラストネットワークの導入は、企業の未来を守るための重要なステップです。信頼できるツールの活用と継続的なセキュリティ対策の強化により、組織の安全性と信頼性を高めていきましょう。