容赦なく 時刻む音 冬の夜
夜中に目が覚めた。
暗闇の中で「コチコチ、コチコチ」と時計の音が聞こえてきた。
その音を聞いていると、生れたときから死に向って
休みなく時が刻まれているのが実感として迫ってきた。
ないてもわめいても時は容赦なく刻まれ、一歩一歩死に近づいてゆく。
自我にとらわれている人間という存在にとって自分自身の消滅程、
戦慄すべきことはないのではないか。
しかし、もう一方で、生まれる前の自分がどこにいたのかを考えると、
たかだか100年に満たない存在の軽さに思い至り、
「いたしかたないのでは」と妙に納得したりもする。